NO56 小沼 ようすけ

CD 3,2&1
IMPRESSION ’74年生まれの若手ジャズギタリスト。
およそポピュラーミュージックの楽器奏者がソリストとして世に出る場合、サポートミュージシャンとして長年活動し、名をあげてからであったり、有名バンドのメンバーとして名声を得てからということが多いが、彼の場合、デビュー当初からソリストとして活躍している。

若手ジャズギタリストの登竜門とも言うべきギブソンジャズギターコンテストで優勝などギターコンペにおいて優秀な成績をあげ、その後’01年にメジャーデビュー後、これまでに5枚のソロアルバムを制作している。

国内外の大物ミュージシャンとも多数競演を果たし、着実にキャリアを積み上げてきている。

彼の作品を聴いていると、例えば渡辺香津美がデビューしたときのような衝撃はない。テクニックを売りにしたような派手なスタイルではないし、大物ミュージシャンがセッションでブレイクしても彼自身は決して自分のスタイルを崩さず、むしろ淡々とプレイしている印象がある。
これが私には不思議で仕方ないのだが、セッションそのものを彼自身が一番楽しみ、そしてそれが競演するミュージシャンの魅力を引きだしているのかもしれない。それも彼の持ち味と解釈したい。
ともかく、若いのに冷静沈着でどの作品を聴いてもそれが逆に物足りなさに繋がるのだが、私にとっても彼はいつも気になる存在である。

更に惹きつけられるのは彼が当初フラットピックを使用してのオーソドックスなスタイルであったのだが、近年ではフィンガーピッキング奏法へと移行してきていることである。

そして、ガットギターを使用したフィンガーピッキングスタイル中心で制作されているのが本作「3,2&1」である。
無伴奏ソロもありまた、初回限定盤にはスタンダードナンバーを無伴奏ソロで演奏したものまで収録されているから、彼のフィンガーピッカーとしての自身と意欲が伺える。

この作品を聴いた後の感想としては他の作品と同じく、やや物足りなさを残しつつも、全体を通した作品の出来栄えは素晴らしいものになっている。
彼の魅力はテクニックで攻めまくったり、分かる人には分かるといった孤高を目指しているようなものではない。本格ジャズでありながら、誰にでも親しめる作曲のセンスと作品全体を通じたバランスのよさがある。

こういったミュージシャンは意外に少ないもので、変な職人気質を微塵も感じさせないところには非常に好感を持っている。

おそらく今後もフィンガースタイルでやっていくつもりなのだろう。そして、テクニック面も含め、今後は更に作品の質は向上していくことであろうから彼には益々期待大である。

蛇足ながら、彼のようなタイプはCDで聴く以上にライブで聴けば迫力や凄みを感じることができると思っている。CDを聴いて物足りなさを感じたとしてもライブでのパフォーマンスがその穴を埋めて余りあるものにしてくれるはずだ。
(06.11.12)

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