NO50 マーティン・テイラー MARTIN TAYLOR
CD | SOLO |
IMPRESSION | フィンガースタイルのギタリストは数多いるが、その中でも最も私が好きなギタリストの一人がこのマーティンテイラーである。 ジャンルはジャズで私が苦手とするジャンルでもあるのだが、にもかかわらず私は彼の大ファンであり、彼の音楽を愛してやまない。 ’56年生まれの彼がギターを始めたのはなんと4歳の頃から。15歳の時には既にプロとしてのキャリアをスタートし23歳の時にはなんと、かのジャンゴ・ラインハルトの盟友にして、フランスの人間国宝ステファン・グラッペリのバンドに参加し、ステファン・グラッペリの晩年の10数年を彼のバンドで過ごしている。その後、’87年から本格的にソロ活動を開始、本国イギリスでは押しも押されぬトップ・ジャズ・ギタリストとして君臨している。 彼の特徴は、フラットピックを使ってのスウィングジャズからディープなジャズもお手の物ながら、なんといってもそのフィンガーピッキングスタイルにある。 ジャズギタリストの中にははフィンガースタイルでも器用にこなす人もいるが、彼の場合はそういったギタリストとは一線を画す、唯一無二にして最強のテクニシャンである。 彼の弾くギターは一見なんでもないようにさりげなく弾いたものであっても様々な仕掛けが凝らされている。そして真骨頂はメロディーとベースとコードワークを同時に弾いてしまうところ。 ベースを一定に刻むだけでも素人にはかなり難しいというのに、彼の親指はまるで何人かで弾いているように、ジャズの複雑なリズムを刻んでいる!もちろん他の指はコードワークとメロディーも同時にこなしているわけだから、一体どうやって弾いているのか全く不思議である。 よく「何人かで弾いているように聴こえるようなギターを弾く」と表現される楽曲はあるが、たいていは実際に弾いてみると以外に難しくなかったりするものだが、彼の場合は簡単そうに見える曲でも私なんかではちょっと挑戦するのも憚られそうだ。 この不思議さは是非聴いて体感してもらいたいものである。 さて、思い入れが強すぎて長くなりそうなので、作品の紹介に移ろう。 上記「SOLO」はフィンガーピッキングのテクニックがいかんなく発揮されている全編無伴奏ソロ作品である。 聴いていただければ分かるのだが、ジャズをよく理解していない私でも十二分に楽しめる作品で、決して独り善がりのインプロヴァイズに延々と終始したりはしていない。 もちろんアドリブパートもふんだんにあるのだが、それが妙に聴き易くて譜面にされたものと変わらない感覚で聴ける。 人によればこれをニューエイジのようなイージージャズであるという者もいるだろうが、私にはこれが心地よい。 彼の作品の中にはホーンなどを入れた本格ジャズ作品もあるが、それですら聴き易いし、ステファンのバンドにいただけあってスウィングジャズなども楽しい。フラットピックを使っても第一級のギタリストであることが分かる。 そんなに派手さはないが、フラットピックもフィンガーピッキングも一流という数少ないギタリストであり、作曲、編曲能力にも優れた類まれな才をもったアーティストである。 最後になるが、彼の作品の多くで、自ら楽曲に対する解説を行っているが、これがなかなかユーモアにあふれていておもしろい。 ついでながらエピソードを一つ。 彼は’02年に本国イギリスで名誉大英勲章第五位という叙勲を受け、「サー」の称号を得たが、それに対し彼は「受勲したからといってギターが上手くなるわけではないさ」と軽妙なユーモアで応えている。 (06.07.02) |
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