NO90 ミシシッピ・ジョン・ハート
CD | Avalon Blues |
IMPRESSION | 今回も戦前の伝説のブルースマンの一人。 1893年生まれで、30代半ばで上記作品をレコーディングした後、一旦はシーンから姿を消す。その後60年代に入り、伝説のブルースマンの再発見のムーブメントの中、見つけ出された時は既に70歳。 その間は故郷で農業をしながら、バーで歌ったりしていたらしく、発見された時も腕は落ちていなかったとか。 この時代のブルースマンの多くは、早世したり、長く生きた人でも、サン・ハウスのように酒や薬に溺れて晩年を過ごしたりと波乱万丈で、あまり幸福な最後を迎えた人はいないようなイメージがあったりするが、彼は’66年に亡くなるまで、比較的幸福に過ごされた人のようだ。 性格もその音楽性同様穏やかで、誰からも親しまれたという。 前回のロバート・ジョンソンがエレキ系のアーティストに大きな影響を与えたブルースマンだったが、ジョン・ハートはフォーク系のアーティストに大きな影響を与えた。 しかし、そのギターは伴奏の域を越えている。 それ程難しいことをやっているようには聴こえないが、とにかく正確でメロディアスである。伴奏だけでインストの音楽として成立してしまうだろう。今でも歌いながらギターを上手に弾ける人はたくさんいるが、これほどしっかりとしたギターが弾ける人はどれだけいるだろうか。 歌にギターだけなら1曲はあっという間に終わってしまうのだろうが、前奏、間奏、エンディングなどきっちりした構成でギター1本でやってのける。ギターの演奏はもちろんのこと作曲やアレンジの能力も非常に高い。普通にアルペジオを弾いたり、ミュートしたりと細部まで気配りが行き渡っている感じがする。この辺りがピアノを置き換えたようなギターと言われる所以だろう。 戦前のブルースマンの作品にはとっつきにくい作品も多いが、彼の作品は総じてメロディアスで、非常に聴き易いように思う。そういった分かり易さもありながら、じっくり聴くとなかなか真似できないような小技も効かせてたりするから味わい深い。 上記作品は戦前にリリースされた作品だが、ギター好きでなくても、ブルースが苦手でも、誰でも聴いて少しハッピーになれるような、そんなアルバムだと思う。 (10.05.22) |
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