NO76 田中 彬博
CD | harukazeharmonics |
IMPRESSION | 2007年モリダイラフィンガーピッキングコンテスト優勝者。 ’86年生まれの新進気鋭のギタリスト。 HP等で吉川忠英や住出勝則なんかで彼がいかに素晴らしいかというコメントを見てしまっていたので、更には、誰かのコメントではアメリカで行われるフィンガーピッキングディでもチャンピオンになれる可能性もあるなどとかかれていたりもしたこともあり、ここ最近の中では最も集中して聴きこんでみた。 ここでさほど意味はないと知りつつ、日本のアコギインストシーンをあえて分類させていただくとする。 日本のフィンガーピッカー界の源流として中川イサトが存在し、彼に触発されて活動してきた岡崎倫典や小松原俊などを第一世代とすると、彼らから影響を受け、まさに今のアコギシーンを創りだした押尾コータローや岸部眞明などが第二世代、そして今どんどん出てきている20代の若手達が第三世代としよう。 今コンテストなどを席巻しているのは田中彬博を含む第三世代というわけだが、彼らの特徴としては当然のことながら第一世代やプリミティブなものからの影響は希薄で、第二世代からの影響が非常に大きいということがある。 奏法的には正統派スタイルだけでなく、随所にヘッジス的奏法を使用したりと一つの奏法に拘泥しない奔放さがある。彼田中彬博もそうである。 逆にいえば、どっちつかずという印象も与えかねないということと、彼らが影響を受けている世代からの影響が色濃く見られるというのがあるが、キャリアの初期は致し方ないことだろうか。 前出のモリダイラのコンテストでも初期は別として、ここ数年の第三世代による優勝者のその後の作品を聴いてみるとだいたいそのような傾向が見られる。 つまり彼の記念すべき第一作目の上記作品もそのような印象なのである。 きらりと光る才能の芽は見えているが、一聴して分かる個性がやや薄い。むろんこれは時間をかけて積み重ねていくものでもあろうが、全体としてなにかどこかで聴いたような音楽だなという印象がどうしても消えない。 そのあたりがこの世代全体の課題である。テクニック的には前世代を凌駕するも部分があったりするし、その傾向は今後更に顕著になるだろうが、10年、20年後に客席を埋められるかどうかは一フレーズ聴いただけで分かるようなアイデンティティーが構築できるかにかかっているはずだ。 欧米系の若手ギタリストが個性を磨くことに躍起になっている感があるのとは対照的な日本のシーンだが(欧米の方はやややりすぎ感があるが)調和派の私としてはいい具合のバランスを求めたい。 ここまできて彼自身について書いてないことに気がついたが、彼を第三世代の代表として書いたつもりである。 ちなみにこの作品はアコギ界のジミヘンなどと呼ばれるかのAKI氏のレーベルからのリリースである。 ウッディーマンを最初聴いた時のような音の印象とハイをカットしローを際立たせたような音作りはとても安定感があって聴き易い。 今回はややネガティブな印象を与えるコメントになったかもしれないが、これも今後に期待が大きいが故と解されたい。 (08.08.24) |
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