第九回 ライブレポート 浜田 隆史

どうしても生のライブを見てみたいと思っていたギタリストの一人だったのですが、週末にも拘わらず奇跡的に仕事が速く終わり、というか仕事を投げ出してライブハウスに駆けつけました。

集客の関係か九州でのライブはほとんどジョイントでのライブになります。
今回は現在鹿児島で活動しているギタリストの町田直哉さんと福岡を中心に活動している城直樹さんとのジョイントのメインでの登場となります。

まず、オープニングアクトを務めたのは現在大学生でもある町田直哉さんです。
彼のことは当日に初めて知ったのですが、いわゆる叩き系のギタリストで、押尾コータロー直系ともいえる奏法でストロークをしながらピッキングをします。
あとの二人が実に場馴れしたパフォーマンスであるのに対し、彼は年齢と同様MCも含め実に若々しくすがすがしいく、オープニングを飾るにふさわしいプレイで場を暖めてくれました。フィンガーピッキング界では凄腕の二人のオープニングというのに緊張したようには見えなかったので、かなりライブをこなしてきているのかもしれません。ちなみにギターはテイラーのカッタウェーでサイドがマホガニーのようなモデルです。
彼のことはCDを入手してきたので、聴きこむことが出来次第、ギタリストにアップしたいと思います。

次に登場は以前のライブレポートでも紹介した叩き系の申し子城直樹さんです。

まず驚かされたのは風貌。
最初ステージに出てきたときは、ライブハウスのおじさんが音の調整でも始めたのかなと思っていたのですが、実は彼こそが城直樹さん本人だった。まだせいぜい20代後半といったところのはずですからかなり失礼ですね。

髪を後ろに束ね、髭を伸ばし、ちょっとふっくらした感じになっていてかなりワイルドな風貌に変わっていたのでびっくり。演奏が始まるともっと驚かされるのですが、彼のライブは何度か生で見ているのですが、見るたびに驚かされるのが凄いところです。

ギターは2台使用で、一台は中国製のようで主にギターを叩くときに使用しているようで、もう一台はオールコアボディのような見た目でメーカー等は分かりませんでした。フィンガーピッキング中心の曲で使用していました。
ライブでは彼に限らずスピーカーから出てくる音圧でどうもギターの本来の音が聴けないのが少し残念です。

演奏の方は、自分の演奏を録音したものをループさせたり、ディレイを長くかけていたり、まあ瞬間のことなので、実際にどうやっているかは分かりませんが、エフェクターを効果的に使用したりというのもライブならではの緊張感があって面白かったです。

彼のステージの最後で演奏したフレアーという曲は押尾コータローの「ファイト」を意識したような曲でベースギターでのチョッパーっていうのかな、低音弦をリズミカルというか高速に引き倒しながらボディーもこれでもかと叩きまくる姿はライブでしか味わえない迫力があります。何度か見た私が驚くわけですから、はじめてみる人なら開いた口が塞がらなくなると思います。

彼はまだ明らかに進化し続けています。

さて最後に登場するのが今回のメインである、浜田隆史さんです。

浜田さんは19世紀後半から20世紀始めにかけ、アメリカで流行したピアノ音楽のラグタイムをギターで演奏するギタリストで地元北海道、小樽の路上でギターを弾き、毎年のようにアルバムを制作するといった、正真正銘のプロフェッショナルギタリストです。アルバムを聴けばその凄さは分かると思うのですが、それを生で体感したかったので、始まる前からかなりわくわくしていました。

今回彼は最近入手したカワセマスターとモラレスという日本の老舗メーカーのギターを持ってきていました。

カワセは彼にしては珍しくレギュラーチューニングにあわせており、ラグタイム用にはモラレスをオープンチューニングにしてという風にしていました。

まずはモラレスを持って挨拶代わりの「メイプルリーフラグ」からスタートです。
やっぱり上手いですね。彼はクラッシックスタイルでギターを抱えるのですが、フォームがとてもきれいです。足でリズムを踏んで、首を左右に振りながら演奏しているのですが、彼の姿を見ているとどこにも余分な力が入っていないようです。
それがあの軽快なプレイを可能にしているのだと思います。

特にアコギでラグタイムとなるとだいたい軽快な曲が多く、スチール弦の場合アルアレイで弾くケースが多いと思うのですが、指や腕に余分な力が入ってしまうと、なかなかあれだけ早くは弾けないはずです。

長時間に渡り路上で演奏し、それによって得たものは限りなく大きいと思います。
私などはどうしても手に力が入ってかえって指が動かなくなることがありますし、早いパッセージを前にするだけで指が硬直してしまいますが、どれだけ弾けば力が抜けるようになるのでしょうか?

パフォーマンスも自信に溢れているという感じで、難易度の高そうな曲をいとも簡単そうに弾いていきます。途中歌物が2曲ありましたが、一曲は自作曲でユーモアある歌詞とブラインドブレイクを彷彿させるような間奏があり、正確無比といったところです。もう一曲はカバー曲でストローク中心にしたプレイです。
歌も結構味があってよろしいかなと思います。これらはレギュラーチューニングでカワセマスターで演奏していました。

インストの方はニューアルバムのプロモーションも兼ねてのライブといいながら、何故かその中からの曲が少なく、まるで彼の生き方を象徴しているかのように自由奔放です。MC中にカポの位置を何度か変えていたりしてたので、多分その時の雰囲気とか気分にあわせてその場で選曲しているようです。

どの曲もかなり難易度は高そうで、左手はどこまでストレッチするのかというくらい伸ばすし、セーハしながら他の指も動く動く、右手も低音源をミュートしながらグルーブたっぷりで、早いパッセージも楽々こなしています。荒っぽさなど微塵もなく、弦を弾く位置にも十分注意を払っています。

右手を見てると、ややブリッジよりでフローティングに構え、指が弦の上をトランポリンの上を上下するかのようにリズミカルに弾かれているように動いています。時折ナット側に指を移動させたりしますが、ミスタッチはない。もう意識などしなくてもその場所に指が到着してしまっているみたいです。しかも首を左右に振っていますので、右手も左手もほとんど見ていないのです。ボリュームやトーンのコントロールにも十分な配慮がされています。

信じられないほど上手いです。帰ったらギター練習しようという気さえなくなってしまいます。これだけ弾ける人世界中探してもそんなにいるのかなぁと思わず思ってしまいます。
スチール弦では最強の一人でしょうね。

さて、ライブの最後は「クライマックスラグ」。CDで聴くよりずっと迫力があって、圧倒されます。CDで聴く以上にライブの方が上手く感じるタイプのギタリストです。

テクニックの話ばかりになってしまいましたが、実際はそれ以上にこのラグタイムという音楽は楽しいです。独特のリズムと明るい曲調があいまって楽しいことこの上ありません。おそらくギターやラグタイムを知らない人でも彼の音楽は純粋に楽しめると思います。
私もギターのことを忘れる瞬間もありましたし、また浜田さんが弾いている姿も実に楽しそうで、それをみてるだけで、楽しくなってくるのです。

3人でジョイントにもかかわらず、それほど多いとはいえない集客だったことを考えると、九州ではなかなか難しいかもしれませんが、2時間くらいたっぷりソロで見てみたと思いました。一度見たら、もっと見たくなる浜田さんのステージを是非もっと大勢の方に見てもらいたいものです。
(07.11.11)
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