第十回ライブレポート 吉田 次郎 IN 広島

たまたま出張で出かけたとき、夜時間があったので、ホテルのコンシェルジュに音楽を聴きながら飲める所はないかと尋ねたら、丁度吉田次郎がJIVEというライブハウスでライブを行うということを教えてもらいました。

吉田次郎はギター雑誌にも執筆があったり、ケイコリーのサポートを務めたりと日本屈指のジャズギタリストです。エレキはもちろんアコギも使うし、フラットピックもフィンガーピッキングも使える万能タイプでもあります。そんな彼のライブが見れるとあっては行かないわけにはいきません。

行ってみるとそこは満席でも50名は入らないだろうくらいの小さいライブハウスで、しかも案内された席はステージ脇にセットしてあるアップライトピアノの横の席。これ以上ないポジションで否が応にも気分が高まります。

予定時間より10分ほど遅れて吉田次郎さんが現れました。今回のメンバーは彼の作品ではお馴染みのベース カールカーター、ドラムスにはライオネル・コーデュー、ピアノには地元広島を拠点に活躍しているという折重由美子さんという布陣です。

ライブは次郎さんがチューニングを終えると、やや唐突に始まりました。曲中でメンバーを紹介するだけで、MCはなしで数曲続けて演奏。ギターはエレキがギブソンのレスポールとメーカーは不明のストラトキャスター、アコギはご存知タカミネのシグネチャーモデル。

私はジャズがそれほど分からないのですが、演奏している曲も知らない曲ばかりだったのですが、気がつくと体を動かしてしまうほどのノリのよさで、ひたすら楽しい。演奏もさすが日本を代表するジャズギタリストだけあって、抜群のテクニックを披露してくれます。

他のメンバーも素人でも伝わるほど上手い。カールカーターはただ上手いだけでなく、このメンバーのムードメーカーのような存在でもあって、アイコンタクトや動きで会場のノリを引っ張っていきます。次郎さんのアルバムにはほぼ全て参加していますからよほど相性がいいのでしょうか。愛嬌のある所作とは反対に、自分のポジションをよく理解した、その場の雰囲気で色々なスタイルで演奏できる、クレバーな人だなという印象を持ちました。

ドラムスのライオネルさんはジャズに詳しくない私でも知っているジャズギタリストのビッグネーム、マイク・スターンのバンドのレギュラーメンバーでもあるということで、実力はいわずもがなといったところですが、私の位置からは丁度シンバルの陰に隠れて叩いている姿があまり見えないのが残念でした。

折重さんは地元広島で活躍するピアニストですが、このメンバーの中では圧倒的に若くて、ベテランの一流ミュージシャンの中に新人が一人という感じです。ジャズピアニストというとガンガン弾きまくるイメージを持っていたのですが、彼女はわりと音数は少なめで、非常に抑制が効いた感じです。でも90度に配置されたピアノとキーボードを両手両足を伸ばし、アクロバティックに演奏するなど頑張っておりました。

さて、数曲が終わると、ベテランらしい落ち着いたMCが入ります。「たくさん曲を演奏したかったのでMCは少なめにしてみました。」とか「今回は小さなクラブをツアーしています。」などライブをすることが好きで仕方ないということが伝わってきます。

本当にギターが弾きたいという純粋な気持ちのみで、MCにも演奏にも余計な力が一切入っていなのがとても素晴らしいなと思うと同時に、私自身そのような純粋な部分を持っていないので、すごく羨ましいなと思ってしまいました。

ところで、次郎さんのテクニックについてですが、小さい頃クラッシックギターを習っていたというだけあって、左手の動きは実に無駄のない、きれいなフォームになっています。、エレキの場合、左の指はかなり大きな動きになりがちですが、フレットに指が張り付いているようで、理にかなったフォームになっています。

一方右手のピッキングは手首がしっかり固定されていて、当たり前ながら、余分な力はどこにも入っていないというのが見てるだけで分かります。そのような合理的な動きが、かなりのスピードの早弾きを延々と続けることができるのでしょう。

そんな次郎さんのテクニックを惜しみなく見せてくれたのが、アンコールで演奏された曲なのですが、アコギのソロからスタートするのですが、まずは、フィンガーピッキングでスローテンポのアルペジオ、コードワークから徐々にテンポを上げてきます。
テンポを上げながらギターのサイドや表面を叩き系ギタリストよろしく、ヒッティングしていきます。レフトハンドタッピングと同時にヒッティングにスラッピングなどを入れてどんどんテンポが上がっていきます。

自分のスタイル以外は感心をもたないというギタリストもいますが、彼の場合は現代フィンガーピッキングのこともしっかり研究していて、まるで自分の出来ないテクニックには我慢できないと言わんばかりです。
フィンガーピッカートしても第一級と言っていいんじゃないでしょうか。

そして圧巻は指をピック代わりにして、早弾きをしていきです。親指と人差し指を使って早弾きしているように見えましたが、人差し指だけあるいは親指だけで弾いていたかもしれません。早すぎて近くで見ててもよく分からないのです。ちなみに右指は爪はのばしていないようでした。

とどめが、口にくわえていたフラットピックを指にし、怒涛の超高速ピッキング。
ただただ圧倒されてしまいました。

その後他のメンバーも加わってのエンディングへと続くわけですが、ドラムス以外は同じリフを延々と繰り返しているだけなのに、もう会場のテンションはどんどん上がっていくようで盛り上がりも最高潮に。

ジャズってこんなに楽しいんだと大感動しました。一緒に行った人は私以上にジャズも音楽も不知でしたが、楽しくて仕方なかったとのこと。終了後はかなり高揚していたので、その夜は更に飲み屋をはしごして盛り上がりました。

やはりジャズはライブで見るものだなと改めて思いました。また、できることなら今日のような小さいライブハウスであればなおいいなとつくづく思いました。

次郎さんにはこれからは他アーティストのサポートは少なめにしてもらい、ソロ活動を中心にしてもらいたいものです。才能の浪費とは言わないまでも、ソリストとして十分な力量があるのだから是非そうしてもらいたいなと思います。

是非また見に行きたいと思わせてくれました。もちろんギターが中心にはあるのですが、たとえ特殊なプレイや超絶テクニックなどなくても、ミュージシャンの息遣いまで聴こえてくるようなところで良質の演奏が聴ければ他には何も入らないといった気分になります。
(07.12.9)

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