第十二回  ライブレポート 吉川 忠英

吉川氏は70年代から石川鷹彦氏とともに日本の音楽シーンに流れるアコギの音を一手に背負ってたようなベテラン中のベテランです。ソロでの活動は比較的最近になってからということですが、ステージングは堂に入ってて、何と言えばいいんでしょうか、どこにも力が入ってなくて、まるで自宅で普通に飲みながら回りに喋りかけながらギターを弾いているという感じです。

演奏は大半がスタンダードナンバーなどのアレンジで、残りが歌モノとオリジナルという構成。
ステージには譜面台が置いてあってそれをめくりながら曲を選んでいるような感じです。普通譜面とか見ながらの演奏だと「それどうなの」という感じになるのでしょうが、この人の場合全く違和感がありません。
しかも、インストでは間違えて「あれ?」なんて声を出して弾きなおしたりという場面があったりしたのですが、普通そんなことがあると見てるほうに緊張が走ったりするのですが、それも全く気にならない。
なぜなら家に集まってギターを弾いて歌っているだけだからです。

というようにライブ会場は不思議に暖かい雰囲気に包まれてしまうのです。多分これは彼の人柄や知り合いに軽妙に語りかけるようなMCによるものに他ならないわけですが、とても初めて見るライブとは思えません。きっと彼のライブに足を運ばれた人は同じような印象を持ってしまうのではないでしょうか。

さて、演奏の内容の方ですが、もともとインスト専門の人ではないし、歌も歌いますよといった風なのですが、歌もなかなか上手いです。
ギター自体はテクニカルではありませんが、リズムがしっかりしていて音がきれい。一音一音がきれいというより、フレーズ全体として美しく聴かせるといったところでしょうか。本当にさすがだと感心するしかありません。

それにしてもこの人は若い。もう62歳だというのに全く年齢を感じさせない。
まだ十分残っている髪を金色に染め、ソフトモヒカンっぽくしたルックスもそうですが、声もトークの内容もどこからみても還暦を過ぎているとは思えません。

セッションギタリストとしての仕事は減っている分、ソロプロジェクトとして自らギターを抱えて日本中を旅して回るそんな挑戦意欲や気軽さなどがそんな風にさせてるのでしょうか。

ここでちょっと余談を。

私が吉川氏の名前を知ったのは私がギターをはじめてからのこでですから最近のことになりますが、吉川氏がかつて所属し、今また再結成したニューフロンティアーズに、瀬戸龍介という人がいます。

実は私はこの瀬戸龍介氏のファンであった時期がありました。それは彼がオールナイトニッポンというラジオ番組の二部でパーソナリティをしていた頃です。当時は生放送で(今は生かも、いや放送しているかもしりませんが)ギターの弾き語りをしたりということをやってて、そこで彼が弾いていた、私の記憶ではギルドだったはずですが、12弦ギターの音が素晴らしく、一気にファンになってしまったのです。もう30年近く前になるでしょうか。

ちなみにその時の一部はまだデビューして間もない頃の長渕剛氏が担当。彼もギターがとても上手くよく番組中に弾き語りなどやっていた。私は長渕ファンでもあったのです。長渕もギターは上手かったけど、瀬戸のギターは更に上手くて音がこれ以上ないほど美しかったのです。
で、長渕は瀬戸の使っているギターを譲ってくれと言ったらしいが、それは無理なので同じモデルを使っている「風」というグループの大久保氏がら譲ってもらったとのこと。そのギターも番組中に弾いていたが瀬戸のギターの音とは全く違って聴こえました。今に思えば、瀬戸はフィンガーピックを使っていたのかなと思いますが、それにしても同じ楽器とは思えませんでした。

ついでに瀬戸の話をもう少し。

彼はニューフロンティアーズを解散してソロになってから「ビューティフルモーニング」という名曲を作っています。日本人の楽曲では最も好きな曲の一つです。にもかかわらず、その後の音楽シーンからは姿を消してしまいました。
その一つの理由はその頃に彼が作った作品のせいだとは思いますが(雅楽を取り入れたというか現代雅楽と言うかとにかく不可思議な作品だったのです)、私には残念でなりませんでした。

こうしてニューフロンティアーズの再結成を機会に世に出てくれているのは私には嬉しい限りです。
ちなみに2008年に再結成しリリースしたキングストントリオのカバーあるばむ「THE NEW Frontiers sing THE KINGSTON TORIO」では多分バンジョーを弾いているのが彼だと思われますが、驚異的といってもいいほど素晴らしいテクニックです。

話がそれすぎてしまいましたが吉川氏のライブを聴きながらちょっとした縁を感じ、そんなことまで思い出してしまいました。

彼のライブはとにかく暖かくてギターがどうのとか関係なくちょっと経験したことのないような心地よさがあります。何度でも足を運びたいし、一気にファンになってしまいました。ライブ終了後サインを貰ったりしましたが、とても気さくで自分をよくみせようとか、ギター上手いでしょうとかそんな雑念を一切感じさせない稀有な雰囲気を持った人です。

当初ヤマハの試奏会もあわせて行われると言うことで、そちらの方にも興味があってということでライブに入ったのですが、吉川氏のライブが見れて本当に幸せでした。
ライブ終了後家に帰って余韻に浸りつつ彼の作品を聴きながら飲むお酒がとてもおいしかったことは言うまでもありません。
(08.10.25)

戻る














SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送